研究課題

Aquariusが観測した海面塩分の精度評価

研究者

阿部 泰人1, 江淵 直人1

  1. 北海道大学・低温科学研究所
内容

史上初の本格的な塩分観測衛星ミッションAquariusは,大気海洋間の淡水フラックスの見積もり精度向上と,それを通した全球規模の水循環システムの理解向上,更には海洋大循環や気候変動に関する理解を深化させることを目的とし,2011年6月に米国宇宙航空局により打ち上げられました.図1に,Aquariusが観測した海面塩分の全球マップの一例を示します.従来から良く知られている海面塩分分布の特徴が,衛星観測によっても捉えられていることが分かります.Aquariusミッションでは,全球水循環に関する研究を遂行するために,1カ月かつ150 kmの時空間スケールで0.20 psu(≒0.2 ‰)の観測精度を持つことを目標としています.しかしAquariusは,海面から射出されたマイクロ波を受信し,その信号を基に海面塩分の値を推定するという間接的な手法を採用しているため,得られた塩分の値が妥当であるかを検討する必要があります.そこで本研究では,Aquarius塩分データを,Argoフロートを含む様々な海洋現場観測データなどと比較することで,その誤差特性と精度を独自に明らかにすることを目指しました.衛星軌道沿いデータを解析したところ,海上風速が強く,海面水温が低い条件下で,Aquariusが観測した海面塩分の精度が低下することが示されました(図2).また,銀河系由来のマイクロ波放射が原因と考えられる季節変動を示す塩分バイアスが,高緯度域で顕著であることが明らかになりました.結果として,赤道域に近い海域では塩分の誤差が最も小さく,緯度が高くなるにつれそれが増加する,という誤差の明瞭な緯度依存性を示すことに成功しました.月平均データを解析したところ,Aquariusプロダクトの誤差は0.22 psuであり,Aquariusミッションの目標精度である0.20 psuまであと一歩であることが示されました.

H27-2a

図1:Aquariusが観測した海面塩分の月平均全球マップ.(a)2012年7月,(b)2013年1月の結果.

H27-2b

図2:塩分残差(Aquarius along-track 海面塩分−Argoフロート表層塩分)の(上段)平均値と(下段)二乗平均平方根を,海面水温(横軸)と海上風速(縦軸)の関数で表したもの.その計算の際に用いたAquarius海面塩分プロダクトは(a)Aquarius Official Release version 3.0,(b)Combined Active-Passive (CAP) algorithm version 3.0,(c)Remote Sensing Systems testbed algorithm version 3.

発表論文
公表日

2014年11月

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